高福祉の裏付けは高負担

2016/08/17

幸福度ランキング世界1のデンマークから
友誼生協のきらり健康生協(福島市)が、これまで7回に亘って実施してきたデンマーク視察研修。同生協の呼びかけに応え、今回初めて当生協から2名の職員を派遣しました。 日程は5月14 日から22 日までの9日間、視察テーマはデンマークの医療・福祉、女性の社会参加などの施策、今回は梶原診療所医事課の百瀬・山根両職員が参加しました。視察団は看護・介護・リハビリ・事務職からなる23名で構成。視察研修の成果を踏まえ、今号から3回にわたり両君に「デンマーク視察研修報告」を寄稿してもらいます。

「パンケーキの国」デンマーク
デンマークはヨーロッパの中でも北に位置し、北欧と言われる地域にあります。北緯はおよそ55 度で北海道よりも北にある国です。国土は九州と同じぐらいの広さで約4.3万平方km。平坦で、最高地点でもおよそ海抜170m 程度。その平坦さから「パンケーキの国」と評されることもあります。人口はおよそ570 万人。一人当たりのGDP は6万ドルを超え、4万ドル弱の日本より生産性が高く(14 年国連集計)、さらに、国民の幸福度ランキングでは世界1位で日本の53位よりはるかに高い国です(16 年国連集計)。 日本との時差は8時間。デンマークへは成田空港から直行便で12 時間弱かかり、あまり飛行機に乗ることのない私達にとっては、初めての長時間のフライトとなりました。 全身に痛みを感じ始める頃、ようやく(本当にようやく!)長いフライトは終わり、デンマークに到着しました。デンマークに到着すると今回の研修のコーディネーター兼通訳のブンゴード孝子さんが足早に視察団の乗るバスに案内してくれました。待っていたバスはVOLVO 社製(隣国スウェーデンの自動車メーカー)。日本ではまず見ることのないバスに乗って、ようやく北欧までやってきたのだと実感することができました。バスは動き出すとすぐに高速道路に入ります。高速道路に入ると言っても通行料は完全無料で、料金所もないため一般道から一本曲がってすぐ。
デンマークではその他、道路に限らず様々な公共サービスを無料で利用することができます。教育や医療、介護などのサービスもそのほとんどが無料です。しかしながら当然、それらの公共サービスを支えるためには多くの財源が必要となります。他の北欧諸国同様、デンマークでも、日本と比べて極めて高い税(なんと所得税がおよそ45%で、消費税が25%!)が、それらの公共サービスを支える財源となっています。 さて、高速道路を降り街中に入ると、すぐ今回視察団が滞在するヘルシンゲルに着きます。ヘルシンゲルは「ハムレット」の舞台となった街で、対岸スウェーデンから目と鼻の先にあります。港にはヨットがたくさん泊まっている穏やかな港町です。自宅から出発して20 時間近い移動もやっと終了。翌日からの研修に備え、1日目はそのままお休みとなりました。

女性も生き方、働き方を自己選択
女性起業家のニナさん(3 8 歳)の講義から始まりました。日本同様、少子高齢化や晩婚化など多くの問題を抱えるデンマーク。男性だけでは社会を支えることができない、と戦後すぐに女性の社会進出を支える制度が作られ、運用されてきました。長期の産休・育休はもちろん、自分で働く時間を決められるフレックスタイム制や、男性の育休も日本に比べ多く利用されています。結果として女性の社会進出は進み(15~64 歳の就業率は72.5%)、また、出生率も1980年代に比べると上昇しています。講師のニナさんは出産当時、難民問題に携わる公務員でしたが、出産後育児をしていく中で、子供との時間を出来る限り多く取りたいと考え、独立し、起業家となりました。起業後は午後3時半から4時には仕事を終え、子供との時間を作るようにしているとのこと。 講演の中ではニナさんのお姉さんについてもお話が出てきました。ニナさんのお姉さんは裁判官をしており、結婚・出産もしていますが、ニナさんとは異なり仕事に力を注ぐという選択をしました。ニナさんは、自身とお姉さんのどちらの選択が正しいということはない、としたうえで、「大事なことは自分自身の人生をどのようなものにしたいのか、それを自分自身で考え、自分自身で選ぶことである」と話してくれました。また、そのうえで社会を始め自分を取り巻く環境に問題があるならば、当事者が声をあげて変えていくことが重要である、とも続けました。このヒアリングでは、日本とデンマーク、起きている問題の多くは違いがないにもかかわらず、社会の仕組みの違いにより、デンマーク人のそれぞれが自分自身の人生について自分自身で決定し、また、そのためにそれぞれが常に自分自身や社会を変え続けている、その結果が大きく異なっているという事実を強く感じました。

次回は一旦山根君にバトンタッチし、デンマークの福祉施設や認知症ケア、幼稚園などの研修先についてご報告します。(百瀬記)